武田敦さんのnoteの多くは日経の記事をもとにしている場合が多いですが、記事内容を整理要約して独自の視点を加えて論じていて、いつも楽しく読んでいます。
今日のテーマは「すぐそこにあるイノベーションの種」。これを読んで、「そう!クールフライヤーによる揚げ調理のイノベーションも、全く誰もが知っている生活課題だった」と思いました。
このイノベーションはまだ広く認知されていませんが、来年製品が発売されれば認知が広がるでしょう。それ以前に少しでも早く広く認知してもらおうと、noteにも取り組んでいるのですが、まだまだです。
武田さんの分類によれば、揚げ調理をしたときの油ハネは「あまりにも当たり前の事で、課題として認識されなかった」に分類されるのではないでしょうか。
あるいは子供の頃から油に水分が入れば油ハネするのは当たり前、と誰もが教えられ、実際火傷などの経験もあって、解決可能であるなどと誰も思わなかったから、かも知れません。
そういう理由で本格的なイノベーションが起きず、取り残されていた課題だった訳ですが、当社にとってはラッキーでした。
研究開始から10年かかりましたが、全くと言ってよいほど油ハネせず、油交換を必要としないほど劣化抑制性能が高いフライヤー技術を開発できたのです。
油ハネ抑制と油の劣化抑制性能。一見無関係に思われますが、実は同根。
油ハネを抑えようと水分の落下沈殿にこだわった結果、微細な揚げカスの沈殿性能も高まり、これが油の劣化抑制性能を高めることになり、同時に解決してしまいました。
なぜ油ハネを解決可能な課題だと考えたかというと、次の2つが大きかったと思います。
十数年前に意欲的なフライヤーの開発事業に関わった際に、これを知りました。
揚げ鍋での調理に比べればほとんどのフライヤーは油ハネしにくいわけですが、フライヤーの機種によって差があるということは、さらに油ハネの少ないフライヤーが開発可能かもしれないという事でもあります。
ある時アメリカの消防士が熱した油に水を注ぐ実験をしている動画を見ました。そのとき大爆発して炎上するのですが、水が注がれてから爆発が起きるまでに時間差があったのです。
考えてみれば、水が気化するには周囲の油から熱をもらって100度まで温度上昇する必要があります。当然ながら質量がありますから時間が必要です。
フライヤーは底部にクールゾーンと呼ぶ低温の領域を持っています。
水滴が100℃に達する前に比重差によって低温領域に落下することができれば、気化せず、従って油ハネは起きないことになります。
そのあたりの事はnoteを書き始めたころに書いています。
そしてヒーター直下の油を冷却するという構造を特許出願、実際に効果が有ることを確認しました。
そしてさらに、ヒーターのレイアウトと加熱の制御によって、落下沈殿性能を高める3件目の特許が生まれました。
3件の特許技術を実装した試作機による油の劣化抑制性は想像以上でした。