「ヒーター直下を冷却する構造」を特許出願
前々回、【1】油中で水分を落下沈殿させることが最重要・・・ というタイトルでブログを書きました。油中で水分を確実に落下沈殿させるためには「ヒーター直下を冷却する構造」が必要なので、この構造を特許出願することにしました。
費用を節約するため関内にある神奈川県発明協会の無料相談を利用させてもらい、何度も通って2012年秋に出願しました。この出願は、拒絶決定に対する審判請求と補正を経て、3年半かかって2016年春に成立しました。
一般的なフライヤーにおいても油槽下部を冷却しており、過去の特許文献のなかには水冷に関する記述も見られます。にもかかわらず最終的に特許が認められたのは、ひとえにヒーター直下を冷却する構造の新規性と進歩性にありました。
普通に考えれば加熱するヒーターと、その直下を冷却する構造は熱効率が悪いと考えられ、誰もやってみようとは考えません。
一方ブログの【1】で書きましたように、この発想は油槽内を横から観察できる窓を設けて行った観察から生まれたもので、必ずしも熱効率を悪化させません。
効果を検証する実験機を自作、実験は成功して写真撮影も
出願作業と並行して、ヒーター直下を冷却する構造によってどれほどの効果があるか検証したくなり、実験機を自作することにしました。
材料は中国性の小型フライヤーのヒーターと油槽、冷却用の水槽は熱帯魚等の鑑賞用水槽です。油槽の底部をくり抜いて耐熱ガラス容器を取り付け、水槽を通して油槽底部の様子が見えるように製作しました。
水槽に水道水を注入し、冷却により温まった水はオーバーフローさせる簡単なものでしたが、ヒーター直下を冷却する構造の効果を検証する目的には十分でした。
実験では水で洗ったもやしを軽く一振り水切りして、170℃設定の油槽に投入したところ、盛大な油ハネが起きないだけでなく、湯気は上がるものの油面から40mm近くに手をかざしても油ハネを感じません。理想のフライヤーに一歩近づいたとうれしくなったことを、今でも鮮明に覚えています。
大きな水槽に囲まれているので、当然ながら本体からの輻射熱は感じません。水槽の上部には外側から断熱材としてバルサ板を貼ったこともあって、油や油槽に触らなければ加熱されていることさえ忘れるほどで、「クールフライヤー」というネーミングはこのときの印象から後に名付けることになります。
上の写真は油槽下部に取り付けたガラス容器の内部を水槽を通して撮影しています。軽く水切りした程度のもやしから放出された水分が落下する様子を捉えています。
光っているのが水滴、茶色はそれ以前に行った調理の揚げカス。青い浄水器やガステーブルの五徳は水槽の向こう側にあります。