先日はクールフライヤーの「油ハネ抑制性能」の高さを動画で見て頂きました。
今日はなぜそれが油の劣化抑制性能につながるのかという話です。まずは油はねしない性能の確認です。
1.油ハネしないクールフライヤーの性能を動画で確認
普通の人の今までの経験からすれば、熱した油に水滴が入れば大きな油ハネが起きて当然です。
ところがクールフライヤーでは170℃の油に水滴を落としても油ハネしません。不思議に思われた方もいると思います。
その理由はこうです。
油を熱した鍋に水滴が落ちた時に大きく油ハネしますが、入った瞬間に跳ねているわけではありません。
例えば20℃の水滴が170℃の油に入った後に加熱されて、100℃に達して気化することで始めて油ハネが生じるわけで、100℃に達するまでには若干の時間が必要です。
一方、水は油よりも比重が大きいので油の中を落下します。
もし100℃に達する前にクールゾーンと呼ばれている底部に近い低温領域に達すれば、油ハネすることはありません。
クールフライヤーではクールゾーンの領域が広いため、多くの水滴が気化せずにクールゾーンに達して沈殿することができます。
特に大きな油ハネを起こす可能性のある大きな水滴ほど油中での落下速度は速く、一方100℃に達するまでの時間は長くなりますから気化せず、従って油ハネしないというわけです。
ここからが今日の本題です。
2.そもそも油はどのようなプロセスで劣化するのか
油はいろいろな要因によって劣化します。
①空気との接触によって油は酸化。その際の接触面積が大きいほど、また温度が高ければ高いほど酸化や重合等の変敗(劣化)が進行します。
②温度の高い状態で水分と接することで加水分解が進行します。
③ヒーター温度が高いと接触するだけで熱重合や分解が進行します。
④温度の高い状態で食材に含まれる成分と反応して様々な変敗が進みます。特に炭化した微細な固形成分が浮遊することで油の劣化は進行します。
3.クールフライヤーが劣化を抑制する方法
上記では劣化の要因を書きましたが、クールフライヤーでは結果的にこれらの劣化要因を排除することができており、その結果高い劣化抑制性能を発揮します。
上記に沿って具体的に見ていきます。
①空気との接触による酸化について
フライヤーで調理中に、空気との接触面積を制限することはできないように思えますが、そうではありません。
どういうことかというと、気化する水分量が多いと多くの気泡が生じて油面に達し、そこで半円形のあぶくとなります。この状態では油が空気と接触する表面積が大きくなるからです。
クールフライヤーでは水分の沈殿料が多く気泡が少なくなることで、空気との接触面積が一般フライヤーに比較して少なくなるというわけです。
また、清掃や保管を含む運用のなかではこの他にも解決できることがあると考えていますが、今日はフライヤー本体の話だけにします。
②温度の高い状態で水分と接することで起きる加水分解
ここで言う温度の高い状態とは主に100℃又はそれ以上の気化した水分がそれです。ですからいかに気化させないかという視点が重要で、これは油ハネを抑制することと全く同一です。
つまり食材に付着していたり、食材から放出された水分をいかに沈殿させるかということで、こちらにも書きました。
③ヒーター温度が高いと接触するだけで熱重合や分解が進行
3件目の特許につながったのは、いかにしてヒーターの表面温度を下げるかというテーマでした。
そのためにはヒーターの表面積を大きくする必要があり、その点で様々な試行錯誤をして3件目特許となるヒーター構造に至りました。
3件目特許は表面積を大きくとることと、高い沈殿性能を同時に達成する構造となっています。詳しくは下記に書きました。
④温度の高い状態で食材に含まれる成分と反応して様々な変敗が進む。特に微細な炭化した固形成分が浮遊することで油の劣化が進行。
調理する材料そのものは温度の高い状態の油に置かれますが、これを避けると調理が成り立ちません。
問題は浮遊している微細な固形物です。長時間浮遊していると炭化が進行してこれが油の色を黒くしてしまい、様々な悪さをします。
ですからこれも沈殿させることが重要です。
ところが水分の気化が多い調理においては気泡が調理層の油を撹拌してしまいますから、微細な固形物は沈殿できません。
水分の気化が少なく固形物の沈殿性能が高ければ長時間調理層に漂うこともありませんから、クールフライヤーではこれが原因となる変敗が起きにくく、油の色も透明度を維持することになります。
100kg調理を行ったあとに、試験機関に送った油がこのような透明度を保っていた理由はこのようなものでした。
いかがでしたでしょうか。
以上のように油の劣化が進む要因を排除できていることにより、クールフライヤーは高い劣化抑止性能を持っています。
最初からこうした理論で進んでいたわけではありませんでした。
さらに油ハネを抑えることを追求していたら、それが劣化抑止性能にもつながったわけで、書いてきたような説明はあとから考えたものでした。
ここまで高い劣化抑止性能が実現できたことは幸運だったと言えます。