どれほど揚げ調理を継続しても油交換は不要!とか、油がどこまでも新鮮に保たれる!などと言うと「ウソだろう!」とか「誇張し過ぎだ!」と思われるのも無理はありません。
現時点では世界の99.9999999%の人の常識は、「揚げ調理をすれば油は劣化してやがて廃油する。」です。
クールフライヤーが劣化を抑制する性能が高いのはわかったけれど、だからと言って「いつまでも新鮮」と言えるのか?という疑問があると思います。
今までも見てもらっている下の図で、なぜクールフライヤー(緑色で表示)では劣化曲線が徐々に水平に近づき、やがて水平になってしまうのか、という疑問です。
ちょうどプレゼン資料を作成していましたので、それを使って説明します。これはコンビニ繁忙店を想定した1日10kg、合計100kg調理を行った実験の3日目のイメージです。
調理を行うと油は劣化しますので、劣化方向のベクトルが生じます。
一方、調理の継続により新鮮方向のベクトルも生じます。新鮮方向ベクトルのうち最もわかり易いのは『足し油』によるものです。
調理を行うと食材によって油が持ち去られるので、新鮮な油を追加します。これは当然ながら新鮮方向ベクトルとして働きます。
2番めの新鮮ベクトルは、食材が油を持ち去る際に新鮮な油だけではなく、劣化成分も一緒に持ち去ることにより生じます。
劣化した油で行った調理では揚げ物の味や香りが劣化しますから、これもほとんどの方がイメージできると思います。
3番めの新鮮ベクトルは、炭化した微細な固形物は沈殿するので、揚げカスを取り除く清掃時にこれが外部に廃棄されることによります。
以前にも書きました、かなり劣化が進んだ底部の油を保存して1年間放置すれば、右の写真ようにようになります。
この写真は極端な例ですが、クールフライヤーでは調理中にも微細な揚げカスの沈殿が進みます。
これが清掃時に廃棄されますので、新鮮方向のベクトルとして働きます。
先の実験では3日目、6日目、9日目に清掃を行いました。
以上のように揚げ調理では3つの新鮮方向ベクトルがあることが前提ですが、このうち2番め、3番めのベクトルは油の劣化が進むとともに大きくなります。
なぜなら、油の劣化濃度が高まれば食材が持ち去る劣化成分の量も増えるからです。
また、油の劣化が進行すれば炭化した微細な固形物の沈殿量も増加します。
これも以前に書きましたが、3日目より6日目の方が底部の色が濃かったので洗ってみたら、目に見える大きさの固形物は炭化していなかったという話で明らかです。
以上のように油の劣化が進行すると新鮮方向のベクトルも大きくなり、やがて劣化と新鮮ベクトルが均衡します。先の実験では9日目でほとんど均衡しており、それをイメージ化したのが下の図です。
一般的なフライヤーにおいても、どこかで均衡してそれ以上劣化が進まない状態が生じると思われます。
ただし重要なのは劣化度が低い、油が新鮮な状態で均衡に達するか否か、です。
クールフライヤーでは劣化を抑制する性能が高く、また劣化成分を沈殿させる性能が高いため、新鮮な状態で均衡が起きてそれ以上劣化が進まず、その結果として油を新鮮な状態に保つことが可能となります。