昨日、油の劣化抑制性能試験で行っていた酸価の値について、分析機関による確定値を元に修正した推移グラフを掲載しました。
そのグラフがこれです。
このグラフは一般的なフライヤー調理での酸価の推移とどの程度異なるのか、この領域に経験の無い方には意味がわかりにくかったと思います。
そこでこのグラフに、一般フライヤーで想定される曲線を書き入れてみることにしました。グラフの上に行くほど劣化が進んだ油であることを示し、この数値が2.5以上の油は厚労省によって使ってはいけないことになっています。
現状のコンビニでの運用情報を参考に書き入れてみたのが上の図です。
1日10kgの調理量をこなした場合には、3日から4日で廃油にする場合が多く、匂いが悪くなりAVチェックを行ってみても廃油にするべきと判断されるようです。
上の図を見て、「だから日によって味が変わるのか!」と思った方もいると思います。
思わなかった方も、次の図を見て頂くと「日によって味が変わる」という意味がわかると思います。
つまり4日で油交換すると仮定して、1日目の油は良い状態です。そして2日目の油はまあまあです。
ところが、3日目になると油は良くない状態に入り、4日目は悪い状態での調理となります。
誤解して頂きたくないのは、この図は大量調理を行う場合を想定しており、油の劣化は調理量に比例しますから、4日目以降は全て悪い油という意味ではありません。
実際には、このグラフの3日目で油交換されている例も多いと思います。
また調理温度や食材の内容等によっても劣化の進行は変化します。
いずれにしてもこのように新鮮な状態と、廃油前の悪い油の状態が現れるのは当然なことで、避けることができないものと考えられてきました。
高級な天ぷら屋さんでは、フライヤーは使わず揚げ鍋が多いですが、1日で油を交換してしまうそうです。1日というのは、対面式の高級店ではせいぜい数組のお客でしょうから油はまあまあ新鮮なはずです。
もっともこの油は廃棄されるわけではなく、まだ使える油ですから中古の油として他の店舗で使われるそうです。
ところで、緑色の曲線は小さなクールフライヤーで、1日10kgの調理を10日間行った際の劣化を示す曲線です。
最終日のみ試験機関に送って正確な分析をしてもらい、その値によってそれまでの暫定値を修正したものです。
この図は、クールフライヤーで10日間100kgの調理を行った油の方が、一般フライヤーで油交換した1日目の終了時点の油よりも酸価が低い可能性を示しています。
10日目までの試験ですが、酸価がこれ以上上昇しない事が強く示唆されています。
調理によって油が劣化するベクトルと、足し油によって新鮮な方向に戻すベクトルが均衡しているわけです。
しかも劣化度の非常に低い状態で均衡していますので、この10日間も、そしてこれからも劣化の少ない状態が継続します。
写真は100kgの調理を終えて試験機関に送った油です。油の透明度も高く保たれています。
これらは、油は劣化するので全量を廃棄して交換しなければならないという、従来の常識を覆すものです。
最初は疑う人もいると思いますが、100%再現性がありますので、やがては新たな常識となるはずです。